顕微鏡でワクワクドキドキが研究人生の原点

現在は経営者としての肩書を持つが、研究生活は実に30年以上にも及ぶ。研究心の芽生えは小学6年生のとき。祖父に買ってもらった小さな顕微鏡で池の水をスポイトですくって見てみたところ、さまざまな種類の微生物ワールドを発見。透明なミジンコが突然パアッと多数の子ミジンコを出産したことにワクワクドキドキ興奮して以来、ミクロの世界に魅了されてきた。大学では、動物、生物好きが高じて、獣医学部で発生学を専攻。たまたま手にしたウシの受精卵の移植の紹介本に「哺乳動物なのに卵!?」と衝撃を受けたのをきっかけに、仕事をしながら受精卵の研究がしたいと、当時まだ少なかった受精卵を扱う会社に就職。しかし、一年間は新人研修のため研究できず、研究心を抑えるのに必死だったが、世界で初めてウシの体外受精が成功したとのニュースを聞くと、ワクワクドキドキは抑えられず、「研究をやりたい!」の一心で体外受精卵移植チームを作り、ウシの受精卵の研究に勤しむ。以降、世界で初めてガラス化保存という新手法を用いてウシの体外受精卵や卵子の凍結保存を成功させるなど、体外受精や体外培養など生殖工学分野で数々の世界最高レベルの新技術を開発してきた。

ある女性との出会いをきっかけに生殖医療の道へ

1999年、長期間にわたり不妊治療をしている47歳の女性との出会いが、ターニングポイントになる。体外受精の失敗を何度も繰り返し、疲れ切って涙する彼女の姿を見て、どれだけつらい思いをしてきたのかと、胸が張り裂けそうに…。「いくら動物分野で新しい生殖工学技術開発に成功しても、医療分野で正しくヒトに適用されないのが現実。では自分がやらないとこのように悲しむ人たちを救えない!」と、翌日には辞表を提出、転職して生殖医療の世界へ飛び込んだ。今までとは違い、地方から最後の望みをかけて訪れる高齢で重度の不妊治療患者さんと毎日顔を合わせるため、早くやらなければという思いは強くなるばかり。ウシからヒトへと研究対象が変わったが、それまでに得た経験や知識を生かし、卵子凍結保存と卵子若返りという2つのテーマを軸に研究に没頭。ゼロから生み出す苦労はあったものの、思うようにいかないことをやるのが開発であり、失敗するのは当たり前という思いで何度も何度も挑戦したところ、2カ月以内という早さで、世界で初めて「ヒト卵子凍結保存」の実用化に成功した。

不当な男女の性の差を出来る限り平等にするために、生殖技術革命を起こしたい!

開発した画期的な卵子凍結保存の技術を、「より早く、より多くの患者様へ」というコンセプトのもと、2000年に、これまでの凍結技術を集約した「卵子、受精卵凍結キット」を開発。出入りの業者に販売させた。取説通りに行えば、そこそこの成功率というこのキットは、50カ国で100万以上の症例が実施され、世界中で大きな反響があった。これで、事情によりいま子どもを持てない方、ガン患者や不妊に悩む方など、子どもを諦めざるを得ない状況だった世界中の多くの人たちが救われるのだ。「ガン治療などの副作用で子どもを産むことができなかったり、また女性だからといって社会の進出を諦めたり、そういった不当な生殖上の差をなくすための、革命を起こしたかった」。男女の生殖上の差にハンディを負い、それによって職業人としての可能性を低めるのではなく、せっかくこの世に生まれてきたのだから、技術の恩恵を、それを望む人世界中のみんなに受けてほしいと強く願う。

ついに解凍後100%生存の画期的な凍結手法 「The Cryotec Method」の開発に成功!

ヒト臨床用に開発し、世界中へ広まって行ったThe Cryotop Methodはそれでもまだ解凍後の生存率や試薬の安全性、プロトコールの困難さにより、多くの卵子や受精卵の命が失われて行き、ヒト不妊治療用の臨床技術として決して満足するものではなかった。またこの凍結製品は患者本意でない商業主義の業者達の手により、意に反して無責任に高値で世界へ転売されて行った。
世界初の凍結技術をさらに研究、改良を続け、2012年、ついに解凍後100%生存の画期的な凍結手法の開発に成功。
この日本発の、世界で最も効果があり最も安全安心な卵子、受精卵の凍結保存技術を、この技術が必要な世界中の患者様すべてに届くよう、最も安価にそしてかつ、正確な使用法とともに伝えたい。
この画期的な凍結法を「The Cryotec Method」と名付け、関連の凍結製品を安全と信頼の「Cryotechブランド」として、すべての患者様をしあわせにしたいと願い、同じ信念、思想を持つ世界26カ国のパートナー達と共に、昨年より全世界供給を開始しました。
それまで不可能であった赤ちゃんが誕生すると、お母さん、お父さん、そしてそのご両親や兄弟、友人、、、。多くの人達からものすごく感謝され、それが唯一、日々の研究開発のエネルギーになる。
さらにこれから、我々が2007年に世界で初めて成功したヒト卵巣組織の凍結(ガラス化保存)、そして微少精子のガラス化保存、また未受精卵の効率的な体外成熟システムや老化不妊卵子の若返り技術など、生殖上の不平等によって毎日がつらい人、闇の中で苦しんでいる人々の人生に、新生殖医療技術の提供という形で明るい光を灯していきたい。